※あんまりバサラ関係ないです。
あなたのか細い背中が、傍にあるというのは実に心強いものでした。
竹中殿、と風に隠すようにごくちいさく呼ぶと彼は悟く気付いて、微笑をもってこちらを振り向いた。用件などなく、ただ呼んだだけである。名前を口にしたかっただけである。
敢えて用件をつくるならば、その瞳に見つめられたかった。大枝で羽を休める鷹のように鋭いが、それでいて晩秋の湖のように穏やかな、彼の目は不思議な光彩をしている。それを見ていると不思議と心が凪いだ。
ススキの穂を指先で遊びながら、竹中殿は用もなく呼ばれたのを知ったらしい、かと言って咎めも苛立ちもせず穏やかに微笑っていた。
「妙な気分だ」
彼は痩せた頬に笑みを浮かべた。
「え」
「今の僕には楽しいことも辛いこともない。雲に乗って遊んでいるみたい。戦も政も君たちに任せっきりで……この彼の大切な時期に」
これが死ぬということなのかな……竹中殿はそう寂しそうに囁いた。
そんなふうに笑わないでほしい。そんなふうに悲しく微笑まれてしまうと、己の無力さを嫌というほど思い知らされた。
「僕の剣は君に遺していくよ。どうか僕の代わりに、秀吉を支えていってくれ」
目を覚まし、目を開け、前を見ると、彼はもう居ず、ススキ野原に私は一人で立っている。か細いその背中が見えないことで、妙に心細かった。
竹中殿の兵舎にゆくと、そこはすっかり片付けられ清められていた。お世辞にも片付け上手な方ではなかったから、がらんとして兵法書や書見が山積みでない彼の部屋を見るのは初めてだ。
文几に目をやる。
そこにも彼の背中のまぼろしを見た。
遺品の一つである剣を取る。使いこなすことはできないし、そんな気もないけれど、柄の仕掛けをカチリと一押しし、刀身を鞭状にする。
しゃらしゃらと鈴のような音をたてて刃は地面に崩れていく。その幾多も連なる刃は、美しくも残酷で、彼の生きた軌跡にそっくりだった。
2008/11/4
半兵衛の形見分けで刀を貰ったのが山内一豊というのを読んだ。
あの人ヘタレな割りにいいとこ持ってくんだものなーw